認知的不協和【社会心理学】

心理学
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人は、客観的には非合理的な屁理屈に囚われることがしばしばある。

たとえば、健康に悪いとわかっていてタバコを吸っている喫煙者の中には、「喫煙者でも長寿の人がいる」、「禁煙するストレスの方が体に悪い」と考えて、タバコを吸い続ける人も多い。

あるいは、長い行列に並んで食べたラーメンがあまり美味しくなくても、「これはこれで美味しい」と感じたり、
参加したくなかったイベントに参加させられたとき、「意外といい経験だった」と自分を納得させたりすることもある。

こうした認知の歪みは、自分の心の中に矛盾を抱えた状態に置かれると、人は無意識のうちにそれを解消しようとするという心理的傾向からきていると考えられる。
心理学者のフェスティンガー(Leon Festinger)はこうした心の中の矛盾を、認知的不協和(Cognitive dissonance)と呼んだ。

フェスティンガーは認知的不協和の解消について、次のような研究を行なっている。

ある宗教団体の例

  • ある宗教団体の信者たちは「1954年12月21日に大洪水が発生して世界は滅びるが、自分たちは宇宙人によって助けられる」と信じていた
  • しかし、当日になっても何も起きない
  • 信者たちは心の中に、「予言は必ず実現するはずだが、実際は大洪水は起こらず、宇宙人も来ていない」という矛盾を抱える
  • そこで信者たちは「自分たちの信仰心によって神が洪水を防ぎ、世界は救われたのだ」と考えるようになった
  • 予言が外れたという事実の解釈を変化させることで、認知的不協和を解消した

フェスティンガーの認知不協和実験

方法

  • 本当は退屈な作業を、次の作業者に「面白かった」と言わされることで生じた認知的不協和を、参加者たちがどのように解消するかを調べた
  • 被験者は、20ドルの報酬をもらえるグループと、1ドルの報酬をもらえるグループにそれぞれ分けられた

結果

  • 実験後に本音を聞くと、20ドルの報酬をもらったグループは「本当はつまらない作業だった」と発言し、1ドルの報酬をもらったグループは「意外と面白い作業だったよ」と発言する傾向が見られた
  • 20ドルという高額な報酬をもらったグループは、それによって認知的不協和を解消できたと考えられる
  • 1ドルの報酬をもらったグループは、それだけでは認知的不協和を解消できず、認知そのものを「面白い」と変化させることで解消した

まとめ

人には認知的不協和の解消のため、自分に都合の良い情報だけを選んだり解釈を都合よく歪めたりする心理的傾向がある。

冷静な判断力を失わないため、こうした心理的傾向について自覚的であることが大切である。

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