災害大国日本では、集中豪雨や地震・津波などによる被害が毎年相次いでいる。
そうした災害時、避難勧告の発令下においても、逃げ遅れて被害に遭う人も少なくない。
災害時に人が避難しないのは、そもそも今起きていることが緊急事態であると認識していないことが大きな要因であると考えられている。
その原因の一つとなるのが、多元的無知(plural ignorance)という認知の歪みである。
多元的無知とは、周囲にいる他人が行動しないことで、自分の不安や疑念を抑えて、「多分大した事態ではないだろう」と捉えることをいう。
多元的無知について調べた実験には、以下のようなものがある。
方法
• インタビューの名目で2〜3人の学生を部屋に集め、アンケートを記入してもらう
• しばらくして、通気口から室内に煙が流れ込んでくる
• 学生のうち、本当の被験者は1人だけで、残りはサクラ
• サクラの学生は煙が室内に充満しても、気にした様子もなくアンケートを記入し続ける
• この状況で、被験者は煙のことを研究者に報告するか?
結果
• 参加者が1人の場合、55%の人が2分以内に研究者に報告した
• サクラが1〜2人いた場合、2分以内に報告したのは12%のみ
結論
部屋に煙が充満するという異常事態においても、他人が行動しない場合においては大した事態ではないと考える多元的無知が多くの人に生じることがわかった。
参考図書
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