決算について【簿記入門・勉強記録⑧】

簿記
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決算で作成される書類について

試算表

試算表(Trial Balance: T/B)は、ある時点までの仕訳を集計したものである。
それぞれ、

  • 借方:資産、費用の勘定科目
  • 貸方:負債、純資産、収益の勘定科目

が集計されている。
それぞれの仕訳を集計しただけのもののため、貸借それぞれの合計金額は一致する

このように、各勘定科目を集計すると、借方合計と貸方合計は一致する。
これを、貸借平均の原理という。

貸借対照表

貸借対照表(Balance Sheet: B/S)は、決済日時点の財政状態(Stockの情報)をまとめたものである。
それぞれ、

  • 借方:資産
  • 貸方:負債、純資産

が集計されている。

損益計算書

損益計算書 (Profit and Loss statement: P/L) は、期間中の経営成績(Flowの情報)をまとめたものである。
それぞれ、

  • 借方:費用の勘定科目
  • 貸方:収益の勘定科目

がまとめられている。

決算の流れ

  1. 決算日までの期中仕訳を集計して、決算整理試算表(前T/B)を作成する。
  2. 決算整理仕訳を作成する。
  3. 前T/B決算整理仕訳を反映させて、最終的な試算表である決算整理後試算表(後T/B)を作成する。
  4. 後T/Bから、貸借対照表損益計算書を作成する。

決算整理仕訳

現金過不足の処理

期中に、帳簿上の「現金」残高と実際の現金有高の不一致が生じた際は、「現金過不足」として計上した。
決算では、原因のわからないまま残ってしまった現金過不足は、「雑損」・「雑益」として処理する

また、実際と帳簿残高とに差額があることが決算時に判明し、原因がわからない場合は、直接「雑損」・「雑益」とする。

当座預金のマイナス残高の負債振替

小切手の振出などで、当座預金口座の残高がマイナスの状態で決算を迎えることがある。
そうした場合は、当座預金のマイナス分を、「当座借越」や「借入金」に振替える

費用処理した項目の貯蔵品への振替

期中に切手などの換金性の高いものを消耗品として購入し、決算時点で残りが出た場合は、貯蔵品」という勘定科目で資産に振替

費用・収益の前払い・前受、未収・未払いの計上

年単位で支払う保険料や家賃などは、決算の期日と、契約の期間にズレが生じる場合がある。
たとえば、

7月1日に、この先1年分の地震保険料120円を現金で支払った。
会計期間は4月1日から翌3月31日とする。

上記のような場合、当期に計上すべきは120円全額ではなく、7月1日からの9ヶ月分(90円)である
このとき、残りの30円は、翌期の「前払保険料」として決算整理仕訳を行う

同様の考え方として他に、前受収益未払費用未収収益の3つがある。
それぞれについて、以下で簡単に整理する。

前払費用(資産)

既に代金を支払ったが、その恩恵(用益:ようえき)にまだ与っていないもの。

ex.) 1年分前払いのテナント料、年契約前払いの保険料etc. の支払側の仕訳

前受収益(負債)

既に代金を受け取っているが、その用益をまだ与えていないもの。

ex.) 1年分前払いのテナント料、年契約前払いの保険料etc. の受取側の仕訳

未払費用(負債)

既に用益を受けたが、まだその代金を払っていないケース。

ex.) 1年分後払いのテナント料、年契約後払いの保険料etc. の支払側の仕訳

未収収益(資産)

既に用益を与えたが、まだ代金を受け取っていないケース。

ex.) 1年分後払いのテナント料、年契約後払いの保険料etc. の受取側の仕訳

固定資産の減価償却

固定資産の多くは、年数を重ねるごとに帳簿上の価値簿価)が減少していく。
この簿価の減少に関する仕訳を、減価償却という。

減価償却には、毎年同額を減価償却していく定額法同率を減価償却していく定率法などがある。

また、記帳方法には直接法間接法の2種類がある。

たとえば、

耐用年数5年(5年後に0円になる)、原価10万円のパソコンを、定額法で減価償却する。

場合、直接法の仕訳は

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
減価償却費20,000備品20,000

のように、「減価償却費」という勘定科目を使って、備品の資産額から直接差し引く。
これに対して間接法の仕訳では、

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
減価償却費20,000備品減価償却累計額20,000

のように、「減価償却累計額」(マイナス資産)という勘定科目に、減少した分の簿価を累積していく。

また、期の途中で購入した固定資産については、月割りで減価償却費を計算するのが通常である

貸倒引当金の設定

貸したお金が返ってこなかったり、ツケ代金が回収できないことを、貸倒という。
過去の取引経験などから、取引のうち、予め貸倒になるものとして考えている金額は借方は「貸倒引当金繰入(かしだおれひきあてきんくりいれ)」(費用)、貸方は「貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)」(マイナス資産)という勘定科目で仕訳を行う。

貸倒引当金の設定方法には、差額補充法洗替法の2種類がある。

差額補充法は、設定しようとしている引当金の金額と、既に計上してある引当金との差額を計上する方法。
たとえば、

期末日時点で売掛金残高が10,000円あり、このうち5%が貸倒になると見積もられた。
南朋、期末日時点で貸倒引当金残高は200円である。

という場合には、差額の300円を

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
貸倒引当金繰入300貸倒引当金300

と仕訳する。これにより、貸倒引当金繰越は見積もりの500円になる。
また、貸倒引当金残高が見積もりよりも大きくなっている場合は、「貸倒引当金戻入(れいにゅう・もどしいれ)」という勘定科目を使って仕分けを行う。

商品売上原価の算定(三分法の決算整理仕訳)

三分法の決算整理仕訳では、以下のような2つの仕訳を作る。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
仕入前期末商品有高繰越商品前期末商品有高
繰越商品当期末商品有高仕入当期末商品有高

「繰越商品」は、決算の時にだけ使用する勘定科目である。
以下、具体例とともに見ていく

前期に、100円で仕入れた商品2つが在庫として残っていた。
今期は100円の商品5つを仕入、商品は計7つとなった。
期中にはそのうち4個が1個120円で売れ、3つが売れ残った。

このとき、決算整理仕分けは、

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
仕入200繰越商品200
繰越商品300仕入300

となる。
また、期中には、以下のような仕訳を行なっていた。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
仕入500買掛金500

ここで、期中および決算での仕入に着目すると、売上原価は以下のように計算できる。

また繰越商品については以下のように、前期分の「繰越商品」勘定はひとつ目の決算整理仕訳でゼロクリアされ2つ目の決算整理仕訳で今期分の有高を計上し直すことになる。

こうやって売上原価期末有高を算出することで、今期の損益を計算することができるようになる。

利益の会計処理

決算整理仕訳を一通り終え、決算整理後試算表が以下のように出来上がったとする。

このとき利益は、費用に該当する科目の合計金額「80」と、収益に該当する科目の合計金額「100」の差額、「20」になる。

これは、以下のような仕訳で算出される。
まずは、収益費用のそれぞれの勘定科目について、ゼロクリアし損益という勘定科目に振替る。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
収益100損益100
損益80費用80

この仕訳は実際には、個別の収益科目、費用科目それぞれについて行う。
上記では、損益は相殺すると貸方勘定科目に「20」残る→ 黒字となる。
この黒字は、繰越利益剰余金(くりこしりえきじょうよきん)に振替る。
(実際は、ここに税金などがかかる)

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
損益20繰越利益剰余金20

繰越利益余剰金は、純資産にあたる。
また、赤字になった場合は、繰越利益剰余金を借方に仕訳る。

まとめ

決算の概要は上記の通りだが、より明確な理解のためには本や動画、講座などで詳しく学ぶことが望ましい。
上記の内容は、以下の書籍を参考とした。


ホントにゼロからの簿記3級 『ふくしままさゆきのホントに』シリーズ
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